で?っていう備忘録

再開です。

「リルラ リルハ」を記述するには2

●あの考古学者の本を読み終わった。
この本、名前だけはよく知られているのに、実際に読まれるのは一つ前の著作ばかりだ。
(どうやら人間の死を宣告しているらしいぜ)とかいう誤った噂が話題になって、
あまり中味をよく知らずに本を手に取る若者たちを誘導しているのだ。
その一つ前の著作の不確かさ・不行き届きが、この本では反省的に語られている。
ざっくり言うと、考古学者はこんなことを言っている。


「前の本とか、その前の本の仕事は、不行き届きはあったけど、そこそこいい線いってたと思うな。いまこうして、この本で、いままで自分がしてきた仕事を振り返って、その時に用いた方法を整理してみたら、自分が前の本とかでしたかったことが、はっきりした。これからは、もうちょっと、きちんとやる事をはっきりさせてから、仕事をするようにするよ」



●この本、読むのにだいぶ時間がかかった。一ヶ月前の僕は、木村カエラを聴きながらこの本を読んでいた。
で、こういうところまでは、理解したつもりでいた。

「歴史」(=リルラ リルハ)を記述するには?
  ↓
その時・その場所で書かれた・話された言葉の集まり、
雑然としてて、まとまりがなくて、どこまでも増え続ける言葉の集まり、
を、無理やり統一したり、起源を解明しようとしたりするのはもうやめよう。
  ↓
言葉の集まりを、どう整理するかじゃなくて、
言葉の集まりが、どうやって形作られ、編制されていくかを記述しよう
  ↓
そのためには「言表」について考えないといけない。
「言表」と言っても難しいことではなくて(この考古学者はこれを掴まえるのにすごく苦労していたけど)、要は、こういうこと。
  ↓
「言表」とは、ある時・ある場・ある文脈・ある規則のなかでの、言葉の振舞い方・働き方・在り方である。バラエティ番組で言う、「空気」、である。
「言表」とは、表現された言語運用である。
  ↓
「言表」について記述すれば、言葉の集まりの形成・編制について記述できるはずだ。
  ↓
じゃぁ、「言表」を、どうやって記述すればいいんだ?

●その続きをまとめてみたい。

まず、「バラエティ番組で言う、「空気」、である。」という、ただ間違っているだけの記述を削除する。

訂正するなら、その場・その時の「空気」自体ではなく、その場・その時の「空気」のなかで言われた「ボケ」、「ツッコミ」、「言い間違い」、「空気の読めないひと言」、「空気を読まないひと言」、「空気を嫌うようなひと言」、だ。

じゃぁ、「言表」を、どうやって記述すればいいんだ?
  ↓
まずは集めよう。「言表」を。
「言表」どうしが似てるとか、矛盾してるとか、語られた時と場所が違うとか、言語・論理・文法が違うとか、そんなのにはお構いなしで。
  ↓
その時には、どこがどう似てるとか、違うとかの「見分け方」をはっきりさせておかないといけない。そこを曖昧にしてはいけない。
具体的に言うと、それぞれの「言表」が気にしている「空気」や「型」の「ずれ」を見きわめなければいけない、ということだ。
  ↓
集めた「言表」の「ずれ」がはっきりしたら、今度はそれを、並べよう。
それぞれの「言表」どうしの「近さ」や「遠さ」を見えるようにしよう。
ごちゃごちゃしてるところは一回解きほぐしてみて、それぞれの「絡み合い」を見よう。
  ↓
そうすれば、どれとどれが「隣にいる」か、「同じ類」か、「同じ形」か、を示せる。
ある「言表」とある「言表」が「連続している」こともあるし、「関係ない」こともある。
(この時も、「こういう「見分け方」をすれば、こうなる」というような、「やり方」をはっきりさせておかないといけない。)
  ↓
そうすると、一つの「図表」みたいなのが出来上がる。
記述の範囲はいくらでも広げられるし、書く時の「縛り」次第で集められる「言表」は代わるから、永遠に完成しない、常に未完成の「図表」が出来る。
  ↓
だから、「歴史」を書く人は、「完成させること」じゃなくて、書き上げた「図表」で何が見えるようになるか、何が出来るようになるか、を考えないといけないね。
「巨大な唯一の歴史」じゃなくて、「箸の歴史」、「水の飲み方の歴史」、「医療制度の歴史」、「性欲の見方・扱われ方の歴史」という見方をしないといけないね。
  ↓
とすると、「時代の変化」とか「革命」とか言う「あれ」の見方が変わるよね。
「ずれ」とか「変化」って、初めから「いろいろな言葉の集まり」のなかにあるものじゃなくて、書き手が書き手なりに「見つけ出す」「変換する」ものになるね。


ここから先が、まだ、ちょっとわからない。
10/24までに、もう一回、読み直してみるつもり。
というのは、この本、『知の考古学』(Michel Foucault著。中村雄二郎訳)を、それまでに大学の図書館に返却しないといけないのだ。